2017年も拡大を続けるインバウンド市場。6月21日に発表された2017年5月分の訪日外客数では前年同月対比で20%を超える成長を見せました。
これで2017年は5か月の内3か月で20%を超える成長となっており、今年も堅調な展開となっていますが、目前に迫った今年の夏休みシーズンはどうなるのでしょうか?
今回は昨年の訪日外客数ランキングでトップとなった中国(年間637万人)にフォーカスし、今年の夏休み動向についてJSTOさんのご協力のもと、Ctripさん、並びにフレンドリージャパンさんの声を含めて確認してみましょう!
[協力] JSTO、Ctrip、フレンドリージャパン
夏休みシーズンの動向
そもそも、夏休みシーズンはインバウンド市場にとってどのような時期なのでしょう。まずは国を限定せずにインバウンド市場全体の7-8月の動向を見渡してみたいと思います。以下は2012年から2016年の5年分の訪日外客数を月毎にまとめたものです。
ご覧の通り、7‐8月は年間を通して非常に訪日外客数が多い時期で、特に7月は1年を通して最も多くの訪日外国人を迎える月、と言えます。実に、2012年から2016年まで、2014年を除いて毎年7月が最も多く訪日外国人を迎えているんですね(2014年は10月が最多の月)。
夏休みは特に学校休暇が長い国・地域が多く、ファミリー層での訪日となり、結果として訪日外客数が伸びている、ということが主な要因としてあげられます。
中国市場の7‐8月はどうか?
それでは今回のターゲットである中国市場の例年の夏休み動向はどうなのでしょうか。2012年から2016年の過去5年間の月毎の訪日中国人数の推移です。ピンクが各年の7月・8月を表しています。
ご覧の通り、訪日中国人市場においても7‐8月に盛り上がりを見せており、特に近年はその動きが顕著に表れております。ではどういった層が特に夏休みに来日しているかというと、やはり子供たちが夏休み休暇に入ったので一緒に海外旅行に行く、というファミリー層が目につきます。
日本ですと夏休みは7月の後半からですが、中国、台湾、香港といった中華圏の国々では7月の頭から夏休みに入るんですね。こういったこともありサマーシーズンは訪日中国人市場が最も盛り上がる時期であるということが言えます。
今年はどうか?
それでは今年の訪日中国人による夏休み動向はどうなのでしょうか?JNTOさんが発表する訪日外客数ですと結果しか確認できないので、今回は中国OTA最大手のCtrip日本法人代表の梁(りゃん)氏、並びに中国現地の旅行代理店と太いパイプを持つフレンドリージャパン代表の近藤氏にも予約状況などをお伺いしました。
その結果、両者共に2017年の夏休みシーズンは「非常に好調な出だし」との考えをお持ちでした。
Ctrip梁日本法人代表
「2017年は5月までで訪日中国人は昨年対比で8%増に留まっており、他の市場と比較すると穏やかな伸びとなっている。つまり数年前のような爆発的な伸びではないものの、毎年コンスタントに伸びていく成長期に入ったとみている。今年の夏休みは好調な出だしとなっており、団体客が2割減る一方、FITは3~4割増えており、トータルとしてはしっかりとプラス成長になりそうだ。」
フレンドリージャパン近藤代表
「中国現地の旅行社からは、今年の夏休みは絶好調、と聞いている。朝鮮半島等の政治情勢があり、日本への人気が高まっていると聞く。特にファミリーでの旅行となると安心・安全を求めるので、日本の優位度が高まりやすい。しっかりした伸びになるのではないか。」
プラス要因については色々と見方はありますが、両者共に2017年の訪日中国人夏休み動向は堅調、との見通しを持たれています。梁代表がご指摘されている通り、2017年の1-5月における訪日中国人伸び率は8%にとどまっており、全体の市場平均の成長率である17%と比較すると見劣りしますが、この夏からの盛り上がりに期待したいところです。
比較として、昨年1年間の訪日中国人数を見たときに、1月から6月は40-50万人台だったのですが、7月に73万人、8月に68万人と一気に拡大しております。9月から12月はまた40-50万人と推移していたのですが、今年も7-8月に突出した山が来る可能性はありそうです。
また、近藤代表も梁代表も共に、団体からFITへの流れの加速を指摘しておられます。注意点としては「FITといっても2~3人の旅行というよりも、5~8人位のグループでの動き」(近藤打表)と把握する必要があり、その想定のもとで物やサービスの提供を展開する必要があります。
また、行動パターンとしては中国からの訪日客においても需要の多様化が進む見込みであり「団体からFITへの動きと共にリピーターも増加し、ゴールデンルート以外の地域への需要の高まりを感じる。また、その地で過ごすことを目的とする滞在型観光の高まりにも期待している。」(梁代表)といった声や、「『モノからコト』というよりも『モノだけからコトも』といった動き、更には『フリープラン+オプションツアー』『東京エリア+近隣観光地』といった傾向も強く感じる」(近藤代表)といった意見もいただきました。
年間旅行消費額が1.47兆円で断トツの1位(2016年)、そして1人当たり旅行支出も主要国内ではオーストラリアに次いで2位の23.2万円(2016年)(滞在日数に大きな違いがあり)と、消費という面で引き続き大きな注目を集める訪日中国人市場。例年通り、盛り上がる夏となるのかどうか、来月再来月の動向から目が離せません!