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- 訪日外客数から見るインバウンド市場動向 2018年10月
日本政府観光局(以下、JNTO)は21日、2018年10月分の訪日外客数(推計値)を発表した。10月統計値は、前年同月比1.8%増で264万600人となり、9月統計値の前年同月比マイナスから回復した。
本記事では、JNTOが選定している重点20地域について、各市場の動向を紹介する。
全体の傾向
全体の傾向として、2018年は訪日外客数は順調に成長している(2018年1月から10月の前年同期間比は9.7%増)。この先、11月と12月の訪日客数が昨年以上であれば、2018年合計の訪日客数が3,000万人突破となるため期待が集まっている。しかし、10月統計値においては成長率がプラスではあったものの、成長率は僅か1.8%に留まる結果となった。
訪日客の7割近くを占める東アジア地域のうち、中国を除く東アジア3国(韓国、台湾、香港)が対昨年比でマイナスとなっており、全体で見ると成長率を抑え込む形となった。一方で、東南アジア市場と欧米豪市場のうち14ヶ国では2桁台の好調な成長率を見せた。
市場別シェア
2018年10月の市場別シェアを見てみる。先に東アジア地方が不調と記載したものの、全体で見ると訪日客の過半数以上を東アジアの3ヶ国(韓国、中国、台湾)が占めている。引き続き3ヶ国の顔ぶれは変わらず、シェアも高いものにとどまっている。
市場別動向
ここからは、JNTOの重点20市場における各市場の動向について触れていく。
東アジア
◆韓国 571,200人(前年同月比8.0%減)
航空座席供給量は増加したが、前年同月比で減少となった。減少の要因は、昨年は10月にあった秋夕(チュソク・旧盆休暇)が今年は9月下旬にあったここと、本市場に人気の北海道で発生した北海道胆振東部地震の名残とみられる。
◆中国 715,300人(前年同月比7.8%増)
東アジア地域では唯一成長を見せた本市場は、10月として過去最高を記録した。FIT(個人旅行)が全体の訪日需要を牽引しており、台風21号や、北海道胆振東部地震等の影響による訪日需要の減退は限定的であるとみられる。
◆台湾 379,600人(前年同月比9.9%減)
全体の航空座席供給量は増加したが、昨年は10月にあった中秋節休暇が9月にあったこと、4連休ある国慶節が今年は1日しかなかったことで訪日客減少の結果となった。また、台風接近によるクルーズ欠航も関係しているとみられる。
◆香港 169,500人(前年同月比0.9%減)
本市場も航空座席供給量は増加したものの、台風21号や北海道胆振東部地震の影響が一部残っている可能性が高く、訪日客数が前年同月をやや下回った。
東南アジア
◆タイ 117,900人(前年同月比13.9%増)
10月として過去最高を記録。空路の新規就航や増便による航空座席供給量の増加と、タイ経済の堅調な成長、各種訪日旅行プロモーションが要因とみられる。
◆シンガポール 35,100人(前年同月比9.4%増)
10月として過去最高を記録。航空座席供給量の増加に加え、昨年度より開始した訪日需要拡大のためのプロモーションも相まって成長したとみられる。
◆フィリピン 47,300人(前年同月比12.4%増)
10月として過去最高を記録。3月からのLCC新規就航(ジェットスター・アジアのクラーク-関西線)や増便(フィリピン航空のセブ-中部線)に加え、継続的な訪日需要が訪日客増加の要因とみられる。
◆ベトナム 39,400人(前年同月比21.4%増)
20%超の成長を見せ、10月として過去最高を記録。10月までの累計ベトナム訪日客数(330,700人)が過去最高であった2017年の年計(308,898人)を超えた。20%超の成長の要因として、紅葉シーズンに向けた大手旅行会社によるツアー販売やチャーター便、インセンティブツアーの催行に加え、グエン・スアン・フック首相の日本公式訪問(10月8日~10日)及びそれに伴う関係者の来日があげられる。
◆インド 13,700人(前年同月比9.6%増)
10月として過去最高を記録。昨年は9月にあった休暇が、今年は10月にあったことによる旅行需要の増加、およびインセンティブツアーの成約増加が成長の要因としてみられる。
豪州・北米
◆豪州 47,400人(前年同月比20.2%増)
20%超の成長を見せ、10月として過去最高を記録。クルーズ船需要の増加に加え、一部の州のスクールホリデー(春休み)開始日の後ろ倒しにより旅行需要が9月から10月にシフトしたこと、旅行博への出展や、航空会社との共同広告などによる訪日旅行プロモーションが大幅成長の要因としてみられる。
◆米国 144,000人(前年同月比14.3%増)
10月として過去最高を記録。市場傾向として外国旅行の需要が高まっていることや、クルーズ会社との共同事業により訪日クルーズ需要が好調であったこと、メディアへの情報提供や支援等の取り組みによる日本関連記事の露出が増加していることが、訪日需要を下支えしたとみられる。
◆カナダ 33,800人(前年同月比15.0%増)
10月として過去最高を記録した。6月にあった空路の新規就航(エアカナダのモントリオール-成田線)による直行便の座席供給量の増加や、それに関する共同広告事業の展開、クルーズ船での訪日旅行の大幅な伸長が訪日客増加の要因とみられる。
欧州
◆英国 36,900人(前年同月比11.1%増)
10月として過去最高を記録。OTAとの共同広告、メディアへの支援等による継続的なメディア露出や、大型クルーズの寄港が訪日客増加の要因とみられる。
◆フランス 34,300人(前年同月比11.1%増)
10月として過去最高を記録。航空会社と継続的に展開している共同広告や、メディア招請などによる訪日プロモーション、7月開幕の大型日本紹介イベント(「ジャポニズム2018」)でのオリジナル訪日旅行パンフレット配布が訪日需要の増加に寄与したとみられる。
◆ドイツ 24,900人(前年同月比12.8%増)
10月として過去最高を記録。堅調な経済状況や、OTAとの共同広告、各種訪日旅行プロモーション、大型クルーズ船の寄港が相まり、訪日者数が増加したとみられる。
◆イタリア 15,100人(前年同月比20.3%増)
20%超の成長を見せ、10月として過去最高を記録。10月までの累計イタリア訪日客数(129,600人)が過去最高であった2017年の年計(125,864人)を超えた。好調な推移の背景には、経由便の座席供給量の増加や、航空会社との共同広告や雑誌への日本各地の記事の掲載、JNTOがイタリア語Facebookで情報発信したことによる旅行先としての日本の認知度の高まりや、クルーズ船の需要の増加があげられる。
◆ロシア 10,800人(前年同月比15.9%増)
10月として過去最高を記録。10月までの累計ロシア訪日客数(79,300人)が過去最高であった2017年の年計(77,251人)を超えた。航空路線の新規就航や増便や、各地での日本関連イベントへの出展やセミナーの実施、各種訪日旅行プロモーションが成長の要因とみられる。
◆スペイン 14,100人(前年同月比17.0%増)
10月として過去最高を記録。10月までの累計スペイン訪日客数(104,100人)が過去最高であった2017年の年計(99,814人)を超えた。市場傾向として外国旅行の需要が高まっていることや、航空会社や現地OTAとの共同広告など、各種訪日旅行プロモーションによる旅行先としての日本の認知度の高まりも相まり、訪日者数が増加したとみられる。
今後の予測
11月は紅葉シーズン、12月はクリスマスから年末年始にかけての長期旅行での訪日旅行への関心・需要の高まりに期待ができる。2018年累計訪日外客数3,000万人突破に向け、今後もインバウンド市場がさらに盛り上がっていくことが予想される。
11月の訪日外客数統計速報は12月19日(水)に発表される予定だ。インバウンドナビでは、今後も速報および市場別の視点からインバウンド市場動向をお届けしていく。