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訪日外国人向け店舗は試行錯誤の連続
—— このお寿司握り体験は最初から導入していたのですか?
中川 : いえ、最初はコース料理のみの提供でした。しかし何かが足らないと感じていました。旅行代理店やランドオペレータからたくさんの意見をいただき、新しくお寿司握り体験のメニューを開始しました。するとこれが支持され、大好評となっています。
—— 明日のタイからの団体様向けにも同じようにお寿司握り体験コースですか?
藤葉 : いえ、明日はブッフェ形式です。こちらもランドオペレーターからの要望です。
—— 毎日、お客様やランドオペレーターのご要望で提供するメニューや料理内容を変更するのですか?
藤葉 : そうです。現在はまだまだ試行錯誤の段階です。どうやったら満足してもらえるのか、常に模索します。お寿司握り体験のビニール手袋も当初のものから変えてきていますし、店舗づくりだけではなく、お食事の内容においても同様です。真摯に耳を傾けていきます。
—— 今後、FIT(海外個人旅行者)のお客様はどうですか?
藤葉 : 実は2016年2月から個人客も迎えることになりました。新しい試みです。これまでの団体客とは全く違う要望が出てくる可能性があります。ベジタリアンの方も増えるでしょうし、宗教的な制約もあるでしょう。そもそも、お店に滞在できる時間も自由ですし、予算も変わってきます。どのようなスタイルがいいか試行錯誤は尽きませんが、スタンスは変わりません。お客様のご要望をお伺いし、できる限り対応し、お店をつくっていきます。
町ぐるみでのインバウンド誘致
—— 今後はどういったことを大事に展開していかれるのでしょうか?
中川 : 六本木という町全体でインバウンド誘致を仕掛けていきたいと思っています。やはりインバウンドは一店舗で何かをやるというのでは限界があると感じています。六本木という町に来てもらい、食事を銀政で食べる、という導線にしなくてはいけないと考えています。
—— 他業態との連携も視野にいれていくということですね?
中川 : その通りです。小売店や宿泊施設、その他観光施設とも連携していきたいです。そしてその先には、今現在の少しダークなイメージがある六本木を、夜でも観光客の方が安心して訪れることができる町にしていきたい。これは絶対に1社1店舗でできることではありませんので。町ぐるみで外国人観光客の皆さんをお迎えしたいと考えています。
—— 点ではなく面での集客ですね。これはインバウンド市場においてはとても重要なことだと思います。是非、六本木エリアでのインバウンド市場を盛り上げていかれることを期待しています。本日は誠にありがとうございました!
取材後記
インバウンド市場における「モノからコトへのシフト」という声はよく聞くようになりました。体験型ツアーが大いに指示されているのもその流れです。この動きを取り入れ、ロビーにて体験を提供するホテルがインバウンド誘致に成功している例もたくさん出てきました。今後は飲食店においても「食」以外の付加価値を取り入れる動きはじわりと広がるかもしれません。その際に重要なことは、とにかくお客様を知ること。インバウンドの難しさは、文化の違いから来る趣向の違いを把握しきれていないことにあります。今回、銀政で見たのは、オープン後3ヶ月にもかかわらず柔軟に試行錯誤しながらお客様のニーズを探ろうというひたむきな姿勢でした。まだまだ拡大期にあるインバウンド市場において、このフットワークの軽さと、変化を受け入れる文化は非常に重要だと感じました。