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欅会の概要やこれまでのインバウンド誘致施策
―― これだけ街ぐるみの展開をみせ、各店舗も協力的にキャンペーンを展開できているのは素晴らしいですね。原宿表参道エリアにおいては、夏は「原宿表参道元気祭 スーパーよさこい」、そして冬にはイルミネーションが有名であり、これらも大変大規模なイベントです。これだけのイベントをこなす欅会の概要と運営体制を教えていただけますでしょうか。
中島:欅会は表参道と神宮前交差点両側の明治通り沿いを区域とする「原宿シャンゼリゼ会」として1973年に設立したのがはじまりです。12年後の1985年には商店街振興組合として法人化しました。1999年にはシンボルである欅から名前をとり、現在の「原宿表参道欅会」へと名称を変更しました。会員数は2016年1月時点で232社、約600店舗となっています。
―― 欅会様の歴史は非常に古いのですね。インバウンド誘致の取り組みを開始されたのはいつ頃からでしょうか。
中島:インバウンドへの取り組みを開始したのは2010年頃です。当時は現在のようにインバウンド市場も大きくなく、当時、この市場に参入する理由は2パターンしかなかったと思います。1つは、日本人の観光客が減ってきたから仕方なく参入するパターン。もう1つは、街として力があり、余力がある今の内に将来の人口減を見据えてインバウンド誘致に取り組もう、というパターンです。欅会は後者でした。
―― 先々の日本人の人口減を見据えて、インバウンド誘致に取り組んだということですね。当初からターゲットはFIT層だったのでしょうか。
中島:そうですね、当時からFIT層をターゲットとしていました。爆買いという視点は当時からあまりなく、表参道原宿のファンを少しずつ増やしていこうという地道なスタンスでした。このスタンスは今も変わらず、日本人の方々とのバランスも重要にして誘致しています。
―― 当初から街の賛同は得られたのでしょうか。
中島:比較的賛同は得られていたと思います。この街は「明治神宮の参道である」という意識を街全体が持っているのが一つの特徴です。一つのことについて意識が統一しているので、比較的同じ方向を向きやすいのかもしれません。何か新しい取り組みを展開する際にも、「まずやってみよう」という考え方を持つ企業・店舗・個人の方が多い印象があります。街をあげての取り組み、例えば掃除であったり、迷惑駐輪や違法看板の撤去であったり、または夏のよさこい、冬のイルミネーションなど、これらに街が一丸となって取り組む機会は比較的多いように思います。
―― そうして始めたインバウンド誘致への取り組みですが、初年度はまずどんなことに取り組まれたのでしょうか。
中島:初年度は受入環境の整備に力を入れました。銀聯カードの決済端末をエリアで一斉に300台導入しました。これには補助金も活用したので、商店街としての負担も軽減されました。また、指差し会話シートをつくったり、各店舗スタッフの方に向けた語学研修やインバウンドに関する店舗診断なども実施しました。語学研修は260名ぐらいのスタッフの方に半年間取り組んでもらいました。
―― 初年度は徹底的にハード、ソフトのインフラ整備に励まれたのですね。
中島:そうして環境整備はしたものの、翌年には東日本大震災があり、訪日外国人全般、特に増加傾向にあった中華圏の旅行者が激減してしまいました。しかしそれでも地道なインバウンド誘致に取り組むという姿勢は変えませんでした。むしろこういう時だからこそ、街の特徴を地道に発信し、街のファンを少しずつ増やしていくというスタンスを大事にしていました。
―― 継続的なスタンスを維持されたのですね。その後、具体的にはどのような受入環境整備を行いましたか。
中島:インフラ面においては昨年の1月以降、無料のWiFiを整備しました。エリアに10箇所のアクセスポイントを設置し、エリア約1キロに渡ってご利用いただけます。