インバウンド誘致にはトライアンドエラーの姿勢が重要 原宿表参道欅会

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前ページ << 【欅会の概要やこれまでのインバウンド誘致施策】

インバウンド誘致にはトライアンドエラーが重要

―― そういった活動の一環としてインバウンド誘致キャンペーンも開始されたのですよね。

中島:そうです。今年で4回目の開催となりましたが、初年度(2013年)は東京観光財団様が主催、当会が共催、そしてビザ・ワールドワイド様から協力を得て開催いたしました。当時は「東京のファンをつくる」というコンセプトで、名称も「Tokyo Fan Week @ Omotesando/Harajuku」というものでした。

―― 翌年以降はどうだったのでしょうか。

中島:翌年は座組みを見直し、当会が主催で東京観光財団様が共催となり、名称も「Tokyo Grand Shopping Week @ Harajuku/Omotesando」と変更しました。「ショッピングを楽しんでいただく」というコンセプトになったのは2年目以降です。

―― キャンペーンのPR施策は色々と実施されていると思いますが、例えば昨年はどういった施策を実施されたのでしょうか。

中島:昨年はオンライン、オフライン共に色々な認知経路を持たせる施策を展開しました。特に力を入れたのが、海外での配布ルートを持った媒体社と組んで展開したオフラインの施策です。商店街は公平性を重んじる性質があるため、ややもすると、海外の方に魅力の無いパンフレットになってしまいかねません。そこで、編集権は媒体社側に持ってもらうことにいたしました。掲載する店舗の選別や内容について海外の方の視点に立って選んでいただきました。そうしてつくったパンフレットを海外の主要旅行代理店に協力を依頼して、東京への渡航が決まっている個人客に手渡ししてもらいました。また、国内の近接エリア、具体的には渋谷区、新宿区、港区のホテルなどへの設置にも力を入れました。

―― この施策の効果検証などは実施されたのでしょうか。

中島:昨年はPR施策の成否を判断するため、路上でのアンケート調査を実施しました。中国・台湾・香港・韓国・タイ各国50名にアンケートを取り、当キャンペーンの認知状況、認知経路、施策の評価、買い物実施状況、及びクレジットカードの利用状況などについて調査しました。

―― それらの結果はどうだったのでしょうか。特に、注力されたパンフレットの効果はどうだったのか気になります。

中島:認知経路としてはパンフレットが最も成果を発揮した結果となりました。因みに2番目は街頭フラッグとなっていました。

キャンペーンフラッグ

キャンペーンのフラッグ。大通り一面にフラッグがなびいていた。

―― パンフレットを手に取ってもらった具体的な場所についても調査されましたでしょうか。

中島:街頭配布、臨時観光案内所、現地旅行会社、空港、近隣ホテルの順に認知度が高かったです。昨年のキャンペーンに関しては、このオフラインのパンフレット施策が最も効果を発揮したと言えます。

―― 色々な施策をうち、きちんとその成果まで計る姿勢が重要なのですね。

中島:インバウンド市場はまだまだ未知数な部分が多いです。その市場で戦っていくにはトライアンドエラーの姿勢が重要であり、不可欠と考えています。このキャンペーンの目玉であるスクラッチキャンペーンについても、一昨年は当たり券を商品券に交換する、というスキームにしていました。ですがこれは利用者にとっても手間であり、活用が進みきらなかったこともあります。その反省を踏まえ、翌年からは当たり券自体が1,000円分のクーポン券として使える仕組みにしました。店舗でのオペレーションに負荷は掛かりますが、利用客の利便性は高まります。やはり、勿論全ての施策がうまくいくわけではありませんので、どの施策がうまくいくのかトライし、その成果をきちんと検証するプロセスが重要だと考えています。

―― トライアンドエラーの姿勢がインバウンド誘致には欠かせないのですね。最後に、欅会がインバウンド誘致を含めて、街の活性化に際して最も大事にしていることを教えてください。

中島:欅会では人間が幸福になる街を想像することが最も大切であると考えています。商店や企業、そして住民とが一体となって活動することを大切にし、これからも活動していきます。

―― 次のビッグイベントは夏の原宿表参道元氣祭「スーパーよさこい」だと思いますが、こちらも楽しみにしております。本日はありがとうございました!

原宿表参道欅会中島氏

原宿表参道欅会のインバウンド担当、中島氏

中島 圭一(なかじま けいいち)
昭和42年高知県生まれ。株式会社こみゅ代表取締役。専門はインバウンド視点を持ったまちづくり。慶応義塾大学文学部卒業後、広告代理店、映像制作、モバイルコンテンツ制作を経て、平成 20 年度より商店街振興組合原宿表参道欅会のまちづくりに参加。平成 22 年度よりインバウンド事業を担当し、その年に銀聯カード決済端末を組合員300店舗に導入。平成27年度、今年で4回目となる春節時期の訪日観光客受入れキャンペーン「Tokyo Shopping Week 2016 @ Harajuku /Omotesando」の事務局を担当し、200店舗以上が参加したエリアプロモーションを実施。

取材後記

欅会様はインバウンドが盛り上がったから参入したのではなく、日本人の人口減を見据えてインバウンド市場へ参入されました。当時はまだインバウンドという言葉も一般的ではなく、なかなか地元でも受け入れられない局面もあったと想像されます。それでも地道な活動を続け、勿論失敗する企画などもあるでしょうが、そこから何かを学び、次に活かされている姿勢が伝わってきました。インバウンド担当の中島氏は自身のご経験を元に、地方の商店街に向けての情報発信を強化されております。トライアンドエラーを繰り返してきた組織から学ぶ点は非常に多く、参考にしたい地域はたくさんあるのではないかと思います。都会と地方という差はあれど、この挑戦する姿勢と結果から学ぶ貪欲さはすべての地域が参考にできると強く感じました。

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