「店舗の入り口等にカードが利用可能かどうかの表示がなかったことが不満だった」
「店舗入口等にカードが利用可能かどうかの表示がなかった」というJCCAの調査結果はVISAの調査結果からも同様のことが言える。VISAの調査結果においては、東京・京都・那覇の飲食店750店舗のうち、店頭にアクセプタンスマークをはっている割合は8%にとどまっているという。色々な理由があって店頭に貼っていないのであろうが、JCCAは店頭にアクセプタンスマークを貼ることの有効性についてこう述べている。
「アクセプタンスマークについては、使える・使えない、という視点での評価のみならず、国際的なクレジットカードのロゴが店頭にあるだけでお店の安心感にもつながる、という考え方もあります。そういった視点からも、加盟店様にはアクセプタンスマークの店頭での表示をお願いしたいと考えております。」
更に、観光という視点を加味した上で、「単純なカードブランドのロゴだけではなく、各ご当地の観光資源などのイラストを加えたマークなども今後はもっと広がると考えています。これらについては各カードブランド様が個別に対応を進めておりますが、旅行客にとっても異国の地における旅行ムードを高めることに繋がる可能性もあります。いずれにしても、カードの利用が可能ですよ、というお知らせマーク以上の付加価値をアクセプタンスマークで発信することも可能なのではないか。」とも述べている。
「使えるかどうかがガイドブック・ホームページ・旅行代理店等ではわからないのが不満だった」
カード利用環境に対する不満の要因の第2位になっていた「使えるかどうかがガイドブック・ホームページ・旅行代理店等ではわからないのが不満だった」については、ホームページでの表示は各個別企業での取り組みになるので今後も加盟店に向けての周知を続けるが、ガイドブックや旅行代理店での情報発信については実際にガイドブック等を調べてみないといけない。JCCAでは2015年度調査において、訪日上位5か国における主要な情報媒体を特定し、調査を実施した。これによると、「クレジットカードが普及する一方で現金がまだずっと広く使われています。クレジットカードでの支払いが期待できる場所は、デパートと大きなホテルです。」(アメリカ・台湾で多く閲覧されている媒体)や、「クレジットカード支払いができるのはほとんとありません。ATMの多くは外国のクレジットカードが利用できません。」(フランスで多く閲覧されている媒体)といった、実態とは異なる内容の表記が確認されたという。
では、実際の日本のクレジットカード普及状況はどうなのか。JCCAが2014年度にまとめた「各国のクレジットカード普及状況」を見てみると、日本はアジア地域においては最も進んでおり、また、世界の先進国と比べても遜色ない水準にあることがわかる。
これら2点に対する今後の取り組み
JCCAとしてはこれら2点の課題に対し、具体的なアクションの方向性を定めている。「訪日外国人への適切な情報発信による利用環境の認知」という課題においては、訪日観光客がよく参照する書籍やウェブサイトへの情報の是正対応を検討しつつ、官民共同でクレジットカードの利用環境整備を進めている点を各種媒体物等で告知することを検討していく予定である。更に、「クレジットカードの利用可能表示の促進」においては、利用可能表示の有効性を発信・周知していく動きを継続すると共に、将来的にはICTを活用した利用可能表示の高度化も検討していく予定としている。
尚、これら2点以外の不満点としては現場の言語の壁があるが、この問題については従前より指差しシートの配布を全国に向けて展開しており、加盟店の満足度も非常に高かったという。また、「言語数や会話パターンを増やしてほしい」という声があったことを踏まえ、2015年度には言語数を8言語追加して計12言語にしている。また、会話パターンを増やす為の取り組みの一つとして、東京都が飲食店向けウェブサイト「EAT東京」において公開している飲食店向けの指差しシートと、JCCA公式サイトを相互リンクさせるといった取り組みも実施している。飲食店以外の他の業界については今後の取り組み課題の一つと認識しているようだ。
訪日観光客の消費市場においても「モノからコト」への動きが進んでいるといわれているが、引き続き一つのコンテンツとしてショッピングが重要な役割を担うことには疑いの余地はない。その際に、クレジットカードを含めた決済手段の多様化、利便性の向上というのは各団体が積極的に関与していくことが期待される。実際JCCAでは「世界で最もクレジットカードが使いやすい国の実現」を標榜としており、毎年具体的な課題明記と解決に向けたアクションを実行してきている。2016年度の調査・アクションについても期待したい。
一方、観光市場全体でみると消費が都市圏に集中している現状においては、ご当地アクセプタンスマークの普及などによって地方が都心に先立って進めることで、訪日客による地方での消費を喚起することに繋げることも可能かもしれない。こういった小さな工夫を重ねていき、日本全体としてインバウンド市場のさらなる拡大と、消費市場の地方への波及が促進されることに期待したい。