今回は中国での企業勤務経験がある編集部ライターが語る「異文化理解」の為のコラムです。中国の企業においては当たり前ですが、日本での企業文化からはちょっと驚きな内容が書かれております。インバウンド誘致においては異文化理解が極めて大事なのは言うまでもありません。是非、実際に現地で生活していたライター陣からのコラムを通し、各国の国民性や異文化の理解を促進させる機会にしてください! 当ライターの前回のコラムはこちら → 「中国の大型連休「国慶節」とは!? 連休にまつわる現地事情コラム」
社内連絡ツールはメールではなくQQ(キューキュー)!
入社してまず上司からいわれたのが「パソコンにQQ(キューキュー)をダウンロードしてください」という一言だった。QQとは中国で最も広く使われているインスタントメッセンジャーで、現在月間アクティブユーザー数は8億を超えている。‴中国版LINE”といわれるWechatも提供しているテンセント社のサービスだが、1999年にリリースされた老舗サービスで中国で最も普及しているコミュニケーションツールだ。いわば、チャットのようなものなのだか、大容量のデータファイルをドラッグ、貼り付けるだけで簡単に送ることができ、また相手がダウンロードしたかどうかもすぐにわかるといった利点がある。資料の受け渡しだけでなく、部内のメンバー全員をグルーピングし「今日は会議です」といった業務連絡はすべてQQで、メールはあくまで部外の人とのやりとりとして使われていた。上司・部下を問わず、チャットでコミュニケーションをとるということは日本の企業では一般的ではないが「用件を伝える」という目的を果たすことには変わりないという意味ではメールと同類なのだろうと理解し、私もQQユーザーとして使いこなしていた。日本においては、一民間のチャットサービスが全社的に導入されるというのはあまり聞いたことがない。むしろ、チャットツールやSNSなどは会社のPCにはインストールしてはいけない、というルールがある会社のほうが多いのではないだろうか。
それにしても、私がどうしても受け入れられなかったことは、返事をすぐにしなければならない、ということだった。中国人はQQで届いた連絡に対する反応が極めて早い。QQは相手がオンラインかどうか分かるため、「QQで連絡が来た=すぐに見て返事をする」のが前提であり、自分のペースで空いた時間に確認し返事をするということは「よし」とされていないのだ。中国人のこのレスポンスの速さは「来た連絡に対してはすぐに返事をしなければならないという礼儀」を守るため、とも聞いたことがあるが、同様の対応を求められることは私にはややストレスであった・・・。いずれにせよ、総登録アカウント数が10億を超えるこのサービス(公私でアカウントを使い分ける方が多いので実際のユーザー数とは違う)はインフラ化していることもあり、受け入れるという選択肢以外はないのである。
お昼休みは自分のデスクで工夫を凝らして昼寝!
入社初日の昼食休憩時、外で昼食を食べオフィスに戻ると、薄暗く恐ろしく静か・・・。「違うオフィスに来てしまったのか」と思ったのだが、よく見ると、多くの社員が自分のデスクで昼寝をしていたのだ。中にはイビキをかいて熟睡している人もいる。電気を消しているのは昼寝をする人のためだという。日本では昼休みにオフィスで「堂々と昼寝をする」というのはあまり一般的ではないが、中国ではむしろ昼寝をすることは「午後の業務の効率化につながるデキル社員がすることだ」のようだ。
興味深いのは快適に眠るための「昼寝グッズ」を各自、持っていることだった。机に突っ伏して眠るときに顔の下にひくための「ミニ枕」、椅子にもたれかかって眠るときに使う「椅子にくくりつけ可能な枕」、首にまきつけて枕替わりになる「エアーピロ」、「アイマスク」・・・。皆、自分にあった寝方を見つけ、お気に入りグッズを駆使して上手に昼寝をしている。なぜ、中国では昼寝が習慣化しているのか。それは育ってきた環境によるところが大きいのかもしれない。というのも、多くの小学校では、昼休みが長く一度家に帰り、ご飯を食べた後昼寝をしてから再び登校する。大学についても、生徒の多くは大学の敷地内の学生寮に住むため、昼休みは一度部屋に帰り昼寝をするのが一般的だ。こういった習慣が根強く残っていると考えられる。
「昼寝」が習慣化していない日本で育った私は、隣の席の同僚が昼寝をしていようが、オフィスの電気が消えて周りが静かであろうが、会社のデスクで心地よく昼寝をすることはできなかった。昼寝をする時間があったら一分一秒でも早く仕事を終わらせ、早く家に帰りたいと思うのは私だけであろうか。
まとめ
はたからみると些細なことかもしれないが、いざ、自分が所属するコミュニティで従来と違った習慣や考えに直面し、受け入れざるをえない時、すぐに順応できないこともあった。しかし、客観的にその利点を考えることが第一に重要であり、そしてそれらはあながち間違いでなく、逆に固定観念に縛られている自分に気づくことが多々ある。
次回は「お年玉文化」と「忘年会」について紹介する。