インバウンドナビでは各地方で活躍する観光関連施設の方、行政関係者の方、その他インバウンド関連事業者の方々と共にレポートを作成したり、寄稿をご提出いただいております。今回は、以前にもご寄稿いただいたVISIT東北株式会社より東北インバウンド市場の活性化に向けて必要と思われるプロセスについて、5回の連載記事をご寄稿いただきます(①観光資源、②プロモーション、③人材、④インフラ整備、⑤広域連携)。以下は当連載を迎えるにあたってのプロローグとなっております。
[著]齊藤良太 [編]インバウンドナビ編集部
東北インバウンド市場の現在
2011年3月11日の東日本大震災発生から5年が経過しました。まだまだ多くの課題を抱える東北地方ですが、その一つに「観光復興」という課題も抱えています。東北の観光については、震災の影響で風評被害を筆頭に、他地域と比較してプロモーションやインフラ整備等の観光促進施策への取り組みが遅れたことが影響し、全国的にも急増するインバウンドエコノミーの効果を享受できていないなど、依然として厳しい状況です。
以前のコラム(東北地方インバウンド市場の現状と可能性<前編>)にて大きく整理いたしましたが、東北地方のインバウンド市場では、インフラ整備が進んでいない現状と、プロモーション不足による低認知度が課題となっております。観光庁にて2015年最新のデータが出ていますので、少し情報をアップデートします。以下は震災前の2010年と昨年2015年の外国人延べ宿泊者数のデータと変化率です。
2010年 | 2015年 | 変化率 | |
全国 | 26,023,000 | 66,372,660 | +155% |
東北6県 | 505,400 | 591,740 | +17% |
青森県 | 59,100 | 115,990 | +96% |
岩手県 | 83,440 | 105,300 | +26% |
宮城県 | 159,490 | 190,130 | +19% |
秋田県 | 63,570 | 53,120 | -16% |
山形県 | 52,630 | 74,750 | +42% |
福島県 | 87,170 | 52,450 | -40% |
※観光庁「宿泊旅行統計調査」
全国と東北6県の外国人延べ宿泊者数の合計値を、震災発生前の2010年と昨年2015年で比較してみると、全国は+155%となっており、まさに連日報道されている通りの市場拡大が確認できますが、東北6県に関してはわずか+17%と、ようやく震災発生前の水準に追いついた数値となっています。また、秋田県、福島県に関しては、同比較において全国47都道府県中唯一2県がマイナス成長となっており、震災発生前の水準にすら届いていない現状があります。もう一つ一昨年対比のデータも確認します。
2015年の市場拡大はどうだったか
2014年 | 2015年 | 変化率 | |
全国 | 44,824,600 | 66,372,660 | +48% |
東北6県 | 402,060 | 591,740 | +47% |
青森県 | 74,010 | 115,990 | +57% |
岩手県 | 77,130 | 105,300 | +37% |
宮城県 | 117,150 | 190,130 | +62% |
秋田県 | 41,510 | 53,120 | +28% |
山形県 | 48,220 | 74,750 | +55% |
福島県 | 44,040 | 52,450 | +19% |
※観光庁「宿泊旅行統計調査」
2014年対比での2015年の成長率については、東北地方は全国平均とほぼ同じ成長率となっており、決して悪くありません。しかし、実数を見ると震災前基準に戻ったところですので、今後はこのペース以上で拡大させていく必要があります。
政府からの後押しは続く
東北のインバウンドポテンシャルは非常に高いと考えます。こちらも以前のコラム(東北インバウンド市場の現状と可能性<後編>)にてまとめていますので参考にしてください。リッチな観光資源・イベント等外的要因・行政支援などを特徴としてまとめています。さらにそれをサポートする発言を安部総理は2016年3月10日の記者会見にて述べました。
ラグビーワールドカップ、更には東京オリンピック・パラリンピックを大きな起爆剤としながら、2020年に、3倍の150万人に押し上げることを目指す。今年を、まさに、「東北観光復興元年」にする考えであります。
この言葉の通り、政府は既に観光復興関連事業として関係予算を平成28年度は50億円(平成27年度は5億円)に大幅増額しております。
東北インバウンドの成功プロセス
今後、インバウンドに関連したアクションが各ステークホルダー(行政・関連団体・観光事業者・代理店)によって実行されていくわけなのですが、是非次のプロセスを意識した予算投入・施策検討を実現してもらいたく思います。
プロモーションが先か、インフラ整備が先かという鶏と卵の議論をする前に、しっかりとしたプロセスを全てのステークホルダーが理解し、一丸となって戦略立案をしていくべきです。今後のレポートにおいて、これらの各ステップについて書いていきたいと思います。