東北インバウンド市場の拡大に向けて <観光資源編>

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前ページ << 【訪日外国人観光客が期待する観光資源とは】

東北地方の観光資源ポテンシャル

ここからは東北地方の観光資源ポテンシャルについて考えていきます。前頁でまとめた人気の高い観光資源に関していくつかピックアップして東北のポテンシャルを確認してみます。まずは、訪日外国人観光客全体による人気第一位の観光目的「日本食」に関して考えてみます。日本食を構成する代表的な食材「お米」「お魚」「お肉」の3つの食材の収穫量ランキングを調べてみました。

順位 米収穫量 漁獲量 黒毛和牛頭数
1 新潟県 北海道 鹿児島県
2 北海道 長崎県 宮崎県
3 秋田県 静岡県 北海道
4 山形県 三重県 熊本県
5 福島県 千葉県 岩手県
6 宮城県 島根県 宮城県
7 茨城県 茨城県 沖縄県
8 栃木県 宮城県 長崎県
9 千葉県 青森県 佐賀県
10 岩手県 宮崎県 栃木県

※農林水産省:産水陸稲の収穫量(平成27年)、海面漁業漁獲量(平成23年)、黒毛和牛飼育頭数(平成26年)

東北地方は米どころと良く耳にしますが、実際のランキングはどうなっているかを見てみると、やはり東北6県の内5県が10位以内に入っており、収穫量は全国7,986,000トンの内、東北が28%の2,209,300トンをしめております。「魚」に関しては海面漁業漁獲量として宮城県、青森県の2県がTOP10入りしています。沢山の魚の水揚げがあり当然新鮮な素材を味わうことも可能になっています。次に「肉」ですが、現在日本のブランド黒毛和牛は沢山の品種がありますが、そのブランド和牛の飼育頭数の統計です。こちらも6県中2県が10位以内にランクインしています。

和食はユネスコ無形文化遺産登録にも登録されているため、インバウンド市場においてもますます期待が高まっております。勿論収穫量だけで全てをはかれませんが、豊富な食材が存在していることは確認できます。これにより、日本食を求めて来日される訪日外国人観光客にとって、東北地方は「食」の面からも魅力的な地域であるといえるのではないでしょうか。

次に、自然・景勝地・温泉・桜と人気の観光資源に関しては、インバウンド市場として成功している北海道と比較してみました。

  北海道 東北6県
面積 83,424㎢ 66,951㎢
人口 540万人 897万人
桜の名所 2箇所 14箇所
温泉地数 249箇所 636箇所
日本国指定名勝 3箇所 33箇所

※国土交通相、住民基本台帳、公益法人日本さくらの会、環境省、文化庁

桜の名所に関しては、第3者機関評価済みの「桜100選」に14箇所も選ばれており、圧倒的な春の観光資源を東北地方は有しているといえます。温泉に関してはクオリティまでを評価はできませんが、数に関しては北海道よりも数百以上も多く有しており、こちらも東北地方が誇るべき観光資源であるといえます。また、日本国指定名勝という文部科学省が指定する「名勝」も東北地方は多く有しています。その中でも特別名勝として有名なのが、岩手県にある毛越寺庭園や日本三景として有名な宮城県の松島です。インバウンド市場での人気地方と比較しても、桜・温泉・名勝などにおいて決して引けを取らないポテンシャルを東北地方は有しているといえるのではないでしょうか。

もう一つ、雪景色はデータを見るまでもなく想像できると思いますが、気象庁の降雪量ランキング(2011年)を見てみます。

順位 都道府県
1 青森県
2 北海道
3 山形県
4 富山県
5 秋田県
6 福井県
7 石川県
8 岩手県
9 長野県
10 新潟県

※気象庁 「気象観測データ」

想像通りですが、冬、東北地方にいけば雪は見れます。雪景色についてのポテンシャルは常にあります。スキーやスノーボードといったWinter Sportsに関しても昨今、東北地方のゲレンデを舞台にいくつかの動きを見ることができます。岩手の八幡平安比高原ではオーストラリア市場をターゲットに、雪の質を全面に出したプロモーションを展開していたり、福島の裏磐梯グランデコではLGBTフレンドリーなプロモーションを実施するなどといった活動が出始めております。

欧米圏からの訪日外国人観光客に人気の神社仏閣に関して、文化庁が指定する国宝登録を受けている神社仏閣は全国194中6つ(宮城県大崎八幡神社、岩手県中尊寺金色堂、宮城県瑞巌寺×2、山形県羽黒山五重塔、福島県阿弥陀堂)が登録されており、重要文化財に関しては、全国553個中36個の神社、全国713個中43個の寺院が登録されております。これは全国的にみると決して多い数字ではありませんが、先ほど比較した北海道との比較においては決して劣っていません。つまり神社仏閣に関してはその「数」自体は言い訳にはならず、他の観光資源と掛け合わせるなど、きちんとした付加価値をつけて提案すればインバウンド市場においても受け入れられるのではないかと考えます。

まとめ

以上の通り、東北にはインバウンド市場において求められているであろう、多くの観光資源ポテンシャルがあることがわかりました。このポテンシャルをどのようにいかしていくべきか、という点については、この連載に続く「プロモーション」「受け入れ環境整備」で触れていきたいと思います。次回はプロモーションの事例をいくつか紹介します。福島県会津若松へ行きインタビューも実施してきましたので、どうぞお楽しみに!

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齊藤 良太

齊藤 良太㈱VISIT東北 代表取締役

投稿者プロフィール

2005年サンフランシスコ州立大学社会科学部卒業後、富士通㈱、日本マイクロソフト㈱を経て、2016年1月㈱VISIT東北(㈱パソナグループ子会社)代表取締役に就任。

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