東北地方インバウンド市場の現状と可能性<後編>
- 2016/1/14
- コラム
- 東北地方, 青森県、秋田県、宮城県、山形県、岩手県、福島県、地方
「東北におけるインバウンド市場」をテーマとしたコラム前編では、統計データなどを用いて東北におけるインバウンド観光の現状を分析させていただきました。コラム後編では、東北のインバウンド市場拡大の可能性について考えてみたいと思います。
<前編はこちらから>
インバウンド市場における東北の潜在力
まずは、東北の観光ポテンシャルを分析していきます。ベンチマークとして北海道を採用し、東北6県を比較して考えてみます。まず、「結果」としての外国人延べ宿泊者数を見てみると、その差は歴然としています。
北海道 | 東北6県 | |
2014年 | 289万人泊 | 40万人泊 |
実に7倍以上の差があります。北海道が成功している理由としては、そのブランドプロモーションとインフラにあると考えております。前編にも記載しましたが、日本政策投資銀行による「東北経済ミニレポート_2014年12月」によると、外国人による認知度は、北海道が65%と圧倒的に高いです。対する東北は11%と低位にとどまります。更にインフラにおいては、特に空のインフラに差があり、北海道の玄関口である新千歳空港と東北の玄関口である仙台空港を比較すると、2つの空港は3,000メートルの滑走路2本と同じ条件ですが、国際線の本数比較で、新千歳空港(13都市)に対して、仙台空港(5都市)とその差は歴然としております。
これだけの差がありますが、東北にはインバウンドを誘致しうる潜在力があります。以下の表は、両地域の代表的な数値と外国人に好まれやすい観光コンテンツの比較です。
北海道 | 東北6県 | |
面積 | 83,424k㎡ | 66,951k㎡ |
人口 | 540万人 | 897万人 |
桜の名所 | 2箇所 | 13箇所 |
宿泊施設部屋数 | 4.7万室 | 7.7万室 |
スキー場 | 129箇所 | 127箇所 |
温泉地数 | 249箇所 | 650箇所 |
世界遺産 | 1箇所 | 3箇所 |
国指定文化財 | 297 | 1740 |
空港数 | 9 | 9 |
出典:住民基本台帳、観光庁、公益法人日本さくらの会、総務省統計局、環境省、UNESCO、文化庁、国交省
このように、観光資源という視点でみると東北には大きなポテンシャルがあります。さらに、どの国の外国人観光客も共通して楽しみにしている「食」コンテンツの領域でも東北6県は非常に強く、米、肉、野菜、果物、魚介類などすべての都道府県にそれぞれ全国区の代表的な特産品があります。
また、国内旅行者を対象としたデータではありますが、楽天トラベルが実施した2015年12月26日~2016年1月3日までの国内旅行先伸び率ランキングでは、東北地方の伸びは著しくなんと6県中5県が全国TOP10入りしていました。「ふるさと旅行券」が積極的に冬旅行を促進したことが結果として表れているようですが、国内旅行先としても非常に伸びている目的地となっております。
急速に進むインフラ整備
東北における各種イベントの開催は同地域におけるインフラ整備を充実させつつあります。2015年3月中旬に仙台にて開催された第3回国連防災世界会議に向けて、ソフト面・ハード面含めて外国人向けのインフラストラクチャー整備を実施してきました。更に、今年2016年の伊勢志摩サミット開催に合わせ、仙台秋保温泉にて開催が予定されているG7仙台財務大臣・中央銀行総裁会議のためのインフラ整備にも力が入っています。その他にも2019年ラグビーW杯の開催地として岩手県釜石市が決まっております。
年月 | イベント |
2015年3月 | 第3回国連防災世界会議 |
2016年5月 | G7仙台財務大臣・中央銀行総裁会議 |
2019年9-10月 | ラグビーワールドカップ (岩手県釜石市) |
これまで弱いと思われていた東北の交通網に関しては、今年3月に北海道新幹線が開通予定となっており外国人観光客の多い北海道との新たなルートとして期待が高まっております。また、今年の夏より仙台空港が民営化営業開始となり、東北の玄関口としてLCC受け入れの可能性なども含み、ポジティブに受け止められる整備も顕在化しています。このように、インバウンド誘致にかかせないインフラ整備が加速しております。
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